採用の時点で、勝負の半分は決まっている
マイクロマネジメントをしない。負荷の高い仕事を任せる。公開講座事業を率いる宇野令一郎に聞く
宇野令一郎 株式会社Aoba-BBT 執行役。社会人向け公開講座事業を統括し、社内横断の生成AIタスクフォースを率いる。東京銀行、ベンチャーキャピタルを経て、BBT大学の設立期に参画。インターナショナルスクール事業では新設と買収先の再生を多数手がけた。
問題解決、戦略的思考、リーダーシップ、アントレプレナーシップ。BBTの核となる領域にAIが加わり、「AI時代に必要な、AIでは代替できない能力」を生涯にわたって学べる場を提供する公開講座事業。その責任者である宇野に、人を任せ、育てる流儀を聞いた。
Q. メンバーに仕事を任せるとき、必ずやっていることは。
まず適材適所かどうかを考えます。その人がやりたいことと、こちらがやってほしいことをよく見て、「この人ならできる」と思ったら任せる。そしてマイクロマネージはしません。そうすると人は育ちます。ただし、お願いするのは負荷が若干高そうな仕事です。
私はずっと新規事業や事業再生ばかりをやってきました。だからチームに入った人には「このチームに入ったらディズニーランドに行く必要はない。このチーム自体が毎日ビッグサンダーマウンテンに乗っているから」とよく話します。それをやりがいだと思ってもらえる人には、本人にとってもやりがいのある仕事になる。そういう仕事をやってもらっています。
Q. メンバーの成長が事業の成果につながった例を教えてください。
インターナショナルスクール事業を担当していた時代です。学校は新規に設立する場合と買収する場合があり、買収の多くは事業再生が必要でした。結果として、ほぼすべての案件を再生することができました。
新規や再生の場合、まずマインドセットがそれに向いている人だけを集めることがとても重要です。「ここに来て成長したい」と思っている人に来てもらう。採用の時点で勝敗の半分は決まっていると思っています。
コンピテンシーの考え方では、人間を水面上と水面下に分けます。財務やマーケティングのように教えて育てられるものは水面上。一方、水面下にある本人の資質は、大人になったらあまり変わりません。だから資質がそこに向いている人を集めて、「うちは毎日ビッグサンダーマウンテンだ」と最初に伝える。新規事業や再生は基本的につらいことが多いのですが、最初に言われているので、終わった後には充実感がある。飲み会で「大変だったけど面白かった」と言える。そうやって成長し、主任や校長になっていった人たちがいます。
Q. 事業がいま向き合っている一番の課題は。
AIの登場によって、リーダーシップも戦略的思考もグローバルコミュニケーションも新規事業開発も、「社会人にどんなスキルが必要か」を定義し直す必要が出てきたことです。まだ答えはありません。去年最適だと思った方法論と、2026年10月現在の最適解は違う。このスピードに乗りながら、AIの動きをさらに先取りした解を提供する。それが最も重要な課題です。
Q. 社内の人材育成として取り組んでいることは。
去年、社内横断の生成AIタスクフォースを組成しました。まず生成AIの活用ルールやガイドラインを整備して、みんなが使いやすい状態をつくった。その上でワークショップや社内活動を展開し、部門ごとに生成AIを使った新しい取り組みをやってもらい、発表する会も設けています。日本企業の中では取り組んでいるほうだと思いますが、もっとスピードを上げなければなりません。保守的とされる金融機関ですら革新的なことをするなら、我々はそれを超えないといけない。教える側がAI時代の組織になっていることが、とても重要だからです。
Q. 3年後、この事業をどんな状態にしていたいですか。
AI時代に人間にはどんな能力が必要なのか。大人から子どもまで、人材育成の再定義が必要になっています。しかもAIは毎年、多くの場合予想を上回る賢さを獲得していく。「人間の役割、人間の能力とは何か」を毎年更新しなければならないときに、BBTはビジネスプロフェッショナルにも、保護者にも、世の中のオピニオンリーダーにも、その答えを一定程度持っている。言うだけでなく実践し、ノウハウが蓄積されている。そういう組織と事業にしていきたいと思っています。
Q. その先に見据えていることは。
欧米ではすでに、AIを従業員やパートナーのように使いこなす「ソロプレナー」的な動きが広がっています。この波は日本にも必ず来る。チームメンバーは持ちながらも、ソロプレナー的な素養を持ち、AIを自在に使いこなし、その上で人とコミュニケーションできる人が一番強い。そういう人を育てるプログラムを出していきたいと考えています。
「『ここに来て成長したい』と思っている人に来てもらうこと。それがとても重要です。毎日ビッグサンダーマウンテンに乗るような日々を、つらいだけではなくやりがいだと思える人。そういう人は、終わった後に『大変だったけど面白かった』と言いながら、確実に成長しています」
